植彌加藤造園株式会社:2024年度日本造園学会賞(技術部門)
「椿山荘庭園における「令和十二景」の創造―日本庭園の 「心と技」の共有・共感を重ねた育成管理技術―」
植彌加藤造園株式会社
椿山荘庭園は山縣有朋によって造営され、現在はホテル椿山荘東京の敷地となっているが、近年コロナ禍により庭園の管理水準は落ち込んでいた面もあった。本事業はこの状況の中、造営当時からの魅力を引き継ぎ、連続する水景や高低差のある地形を活かした風光明媚な庭園を、次世代に引き継いでいくために蘇らせるという造園技術の発展に寄与する事業と言える。
植彌加藤造園株式会社では、歴史的な資料や言説の分析を行い、また、同じく山縣による造営である無鄰菴の指定管理によって培われてきた技術も導入し、庭園の修景を行っている。その際には、ラグジュアリーホテルとしてのイベントや高級飲食店の展開にも合わせる必要がある。敷地の状況が変化するなかで、歴史の変遷とともに培われてきた美しさを、現代の使いこなしにも対応させているのは見事である。当初の「椿山荘十勝」に加え、その本質を活かし発展させた「令和十二景」を創造したことも評価できる。
また、継続的な取り組みとして、現場で作業する人と定期共有会も実施し、センサリーツアーとして機能する仕組みも展開している。これは庭園における継続的、横断的な管理体制の構築の実績として貴重であり、前述の景観を維持発展させる独自の技術として優れたものであると感じる。具体的でわかりやすく、平易な言葉で記載された「育成管理指針」は、歴史的な記録や関係者の思いも込められており、オリジナリティを感じる。
散策する人の姿と共に美しい風景が生み出されている椿山荘庭園の施工・維持管理技術は、今後の造園技術発展につながる業績である。
以上より,学会賞(技術部門)を授与するに相応しいと判断された。