大野暁彦氏: 2024年度日本造園学会賞(設計作品部門)
「<ぶるーむの風>他、一連の林地再生をテーマとする作品」
大野暁彦氏
代表作として挙げられている<ぶるーむの風>の庭は、小規模ながらも既存の植生に細やかに配慮し、境界構造物を改変して、地域の緑を守りつつ開かれた空間が生み出されている。診療施設にありがちな閉鎖性を払拭し、屋外ファニチャーを建築と自然の中間に効果的に配置することで、利用者や地域住民の積極的な屋外利用を促す効果が高く評価される。園路の線形は微地形に寄り添い、丁寧に処理されたエッジや控えめなサイン類が自然に溶け込みながら手作り感も保っている。また、ゲートやフェンスを廃する設計により、樹林の一部伐採というネガティブな要素を街路景観の向上へとポジティブにつなげた点も注目に値する。
大野氏は他のプロジェクトにおいても、林地の徹底調査を基盤に、種子の採取や苗の育成から関わる独自の実践を続けており、施主や住民と協働する過程自体が森林生態への関心を高める教育的効果をもたらしている。こうした一連の取り組みは、生態学的視点と造形力の高いデザインを融合させる質の高さを複数の案件で一貫して示している。
以上より,学会賞(設計作品部門)を授与するに相応しいと判断された。