福岡孝則・槻橋修: 2023年度日本造園学会賞(設計作品部門)
福岡孝則氏・槻橋修氏
南町田グランベリーパーク
民間(鉄道事業者兼商業施設事業者)と公共がそれぞれの課題(分断されていた南北の街,商業施設の老朽化等)を解決するために連携して豊かなパブリックスペースを作り出している本設計作品は,ランドスケープアーキテクトだけでなく建築家,まちづくりコーディネーター,植栽デザイナーなど多様な専門家が関わり,駅,商業施設,公園,河川が一体となったウォーカブルでサステイナブルな街を目指し整備されている。
「すべてが公園のようなまち」をコンセプトに,14の広場とストーリーがつながる空間となっているが,一番の特徴は商業施設と公園を結ぶ部分にパークライフサイトを設けていることである。このパークライフサイトがそれぞれの空間の要と位置付けられる空間構成が優れている。また,公園のような商業施設を目指し,店舗ファサードの視認性を確保しながらも植栽や人の拠り所となるスペースを設けており,ファニチャー類,植栽を絡めたサインや犬用の水飲み場に至るまで丁寧なデザインがされている。商業施設と公園を結ぶ部分に大きな斜めのガーデンを設けており,このエリアを特徴付ける優れた象徴的な景観を作り出すことに成功している。審査過程における現地訪問時に商業施設と公園の一体的な利用があまりみられなかった事が若干心残りではあるが,今後,より利用が一体化していくことが望まれる。複合的な課題を官民がパブリックスペースを通して横断的に解決していく実例として,今後のランドスケープの役割や価値を高める非常に優れた作品であると考えられる。
以上より,学会賞(設計作品部門)を授与するに相応しいと判断された。