株式会社フォルク・一般社団法人シモキタ園芸部: 2023年度日本造園学会賞(事業・マネジメント部門)
株式会社フォルク・一般社団法人シモキタ園芸部
シモキタ園藝部
シモキタ園藝部は,地下化した線路跡地のオープンスペースのデザインと維持管理の体制の立案をランドスケープアーキテクトが担ったプロジェクトである。
本プロジェクトの特徴はまずその組織体制と運営にある。地域内外から募ったメンバーと話し合いを重ね,前身となる地域活動の意志も引き継ぎつつ,鉄道事業者の意志や地域の人材ポテンシャルが活かされ,プロの造園業者と市民が協同できる仕組みが作られた。構成メンバーが自ら経営資出・労働を行う「ワーカーズコープ」方式の採用や,個人の意志で関わり方の濃淡が選択できる設定など,開放的でフラットな組織でありつつ,事業が持続する仕組みが目論まれている。
全長1.7kmに及ぶ線路跡地の中ほどには菜園と草原のある「シモキタのはら広場」と「こや」と称される建物が作られ活動拠点となっている。都市における生物の多様性や物質の循環を象徴する野性味のある広場は,従来の下北沢の界隈性と新たに作られた洗練された施設群とをゆるやかに接続し,賑わいを見せている。
シモキタ園芸部は植栽管理をはじめ,イベント運営,コンポスト,園藝学校,ハーブティースタンド,古樹屋,養蜂など,まちのみどりを地域のコモンズとして育みながら暮らしに生かす事業を展開しているが,現地で園芸部のスタッフが活動する様子や町の来訪者がそこに溶け込む様子が観察でき,本プロジェクトのマネジメントが景観性を伴って機能していることがうかがえる。
以上より,学会賞(事業・マネジメント部門)を授与するに相応しいと判断された。