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ランドスケープ研究83(4) 緑地保全のゾーニング 歴史的環境保全の視点から

日本造園学会誌「ランドスケープ研究」83巻4号を発刊しました。

特集:

緑地保全のゾーニング 歴史的環境保全の視点から Zoning Systems for Conservation of Greenspaces: From the Viewpoint of Conservation of Historical Landscape

「風致地区」「歴史的風土特別保存地区」「近郊緑地特別保全地区」「特別緑地保全地区」「生産緑地地区」「伝統的建造物群保存地区」「景観地区」「重要文化的景観」など,緑地に関するゾーニング制度には様々な種類がある。
あるものは都市の骨格を形作る自然的環境として,あるいは古都における歴史的資産のブランド価値を高める背景として緑地の保全が求められ,その都度新たなゾーニング制度が創設されてきた。
これらのゾーニング制度に共通するのは,守るべき対象を明らかにし,区域を明示し,その区域内に土地利用制限を行うことで現状の緑を守るという仕組みにあるが,時間の経過とともに社会情勢も変化し,いつしか硬直的な運用に陥り,指定当初の姿を維持することに多くの労苦を割いているように見える。
本来,目に見える景観は人々の生活の営みが積み重なることにより作り上げられてきたものであり,時間の経過とともに新たな要素が加えられ,さらに歴史的な重みが加えられていく。ある一時点の姿を切り取って,その姿を維持しようという運用に陥りがちなゾーニング制度も,地域における人々の営みそのものを保全対象に加え,時間の積み重ねによる景観の変化をもビルドインした景観法や文化的景観制度,歴史まちづくり法制度のような新たな仕組みも創設され,その成果を挙げつつある。
本特集では,緑地保全のゾーニングを歴史的景観保全の切り口から総勢13名の論者に様々な角度から論じていただいた。各論者が論じる内容は多岐にわたるが,最終的には,より充実した魅力ある暮らしを送る舞台の形成を目指し議論が進められている点で一致している。
本特集が緑地保全のゾーニングの歴史的経緯の確認と,これからの可能性についての議論の端緒となることを期待している。
(編集担当:古澤達也・大石茉由佳)


目次

特集にあたって
緑地保全のゾーニング:歴史的景観保全の視点から
古澤達也・大石茉由佳

総論
ゾーニングによる緑地保全・歴史的資産の保全の歩み -風致地区から歴史まちづくりまで-
舟引 敏明

論説
風致地区の成立と展開
阿部 伸太
地域制緑地と緑地の機能評価について
根岸 勇太
古都における歴史的風土の保存のこれまでの取組と今後のあり方
富所 弘充
文化的景観のめざすもの -「図」としての地域-
惠谷 浩子
地域の歴史的風致の保全と創造 -歴史まちづくり法の果たした役割と展望-
脇坂 隆一
地域制緑地の経済評価:現状と幸福度アプローチの可能性
朝日ちさと
観光と地域制緑地
田中 伸彦

各論
「くらしの景と緑地保全~文化的景観を活かすデザイン」京都・宇治の場合
宮城 俊作
鎌倉市における歴史的風土保存のあゆみ
永井 淳一
明日香村における歴史的風土保存の取り組み -住民生活との調和の視点から-
藤田  尚
高山市における歴史まちづくり
西永 勝己
金沢における歴史的景観保全を背景とした緑豊かなまちづくり
中谷裕一郎・上野 裕介