ランドスケープ研究89(4) 生業の復興による風景づくり
日本造園学会誌『ランドスケープ研究』89巻4号を2026年2月に刊行しました。
特集:「生業の復興による風景づくり」
Landscape regeneration through the revival of local livelihoods
我が国においては,地震・津波・豪雨等の自然災害が頻発しており,とりわけ農林水産業を基盤とする地方部では,災害による生業の喪失が地域社会の持続性に深刻な影響を及ぼしている。こうした状況において,少子高齢化過疎化等に拍車がかかる中で,生業の再生は単なる生産環境の回復にとどまらず,地域の風景と文化を再構築する基盤として重要な意味を持つ。
豊かな自然環境を背景に里地・里山・里海に代表される生業および暮らしの場が広がっている地方部の被災地においての,生業の再生,地域の復興とは何なのか。大規模災害被災地に対する地域スケールや都市スケールの復旧・復興のあり方については,当学会のみならず多くの議論や論考が引き続き行われている。
その一方で,農林水産業を基盤としてきた地域においては,災害後のそれぞれの被災・復旧状況に応じて,集落や地区のスケールでの「小さくともキラリと光る」独自の取組みも考案され実行されている。こうした取り組みの各地の現場においては,被災前からの平時においても地域性や共創性を大事にしてきた経緯を踏まえて,様々な連携や協力の輪を強化しながら持続的に実践されている。このような実践のほとんどが,当初は「手さぐり」の感覚で始められ,実行を重ねる上での「手づくり」の丁寧さが共感を呼び,関係者の納得を伴う「手ごたえ」のある成果の実感につながっている点に注目したい。さらには,新たな地域性の再発見,地域自治やエリアマネジメントの再構築をもたらしていると考えられる。
本特集「生業の復興による風景づくり」では,ランドスケープの視点から災害後の地域再生のあり方を考察する。地方部の農林水産業に着目し,生活・生業・生産の場に軸足を据えた国内各地の実践事例を通じて,災害からの風景再生の取り組みにおけるポイントや課題,レジリエンスの向上に資する取り組みの要点を明らかにすることを目的とする。
(特集担当:德永哲)
目次
座談会
○自発・自力・協働で取り組む風景の再生
田畑 勝彦・徳水 利枝・徳水 博志・大津 耕太・大津 愛梨・德永 哲・荒木 笙子
総論
○大災害時代と Man-made landscape の復興
蓑茂 壽太郎
各論
○農業と農村風景の復旧・復興に必要な共助による生業支援
朝廣 和夫
○ワイン用ブドウ栽培からつないでゆく復興・再生の風景づくり
―地震・津波・原発事故による複合災害地における景観・顔づくりへの挑戦―
遠藤 秀文
○能登輪島市三井町における「里山から始める能登復興」
―持続的な生業と景観再生に向けて―
町田 怜子・山本 亮・橘 隆一・宮浦 理恵・茂木 もも子・佐藤 貴紀・五野 日路子
○「開かれた」漁業をめざし,漁業集落の新しい風景をつくる
―石巻市半島部の事例から―
渡部 更夢・荒木 笙子
○舞根における風景再生の実践
―自然との応答関係と地域主体の判断から考える―
畠山 信
※発刊からおよそ3か月後に、執筆者の許諾が得られた記事はJ-STAGEにて公開します。