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ランドスケープ研究84(3) 社会・環境インフラとしての神社

日本造園学会誌「ランドスケープ研究」84巻3号を発刊しました。

特集:社会・環境インフラとしての神社
Shinto shrines as social and environmental infrastructure

歴史や文化を手掛かりとして自然環境を保全・創出を試みる領域として造園学・ランドスケープ分野を位置づけることに異論はないと思われる。その点において神社ないしその空間をランドスケープ研究において取り上げること自体には違和感がないだろう。その一因は,神社それ自体が自然環境と深くかかわる存在,具体的には古代またはそれ以前の人々が自然環境を読み取り,“コミュニティ”としてその場所の意味を共有するための空間的装置であったという側面を,現在の我々が認識しているからと思われる。
その一方で,歴史的存在であるということは,その時間的蓄積の中で空間の機能・意味の重層性を多分に含む空間でもあるということである。古代から現在に至るまで清なる空間であり続けたわけでもなく,都市のレクリエーション空間として,あるいは物見遊山の地として機能した側面もあり,かつ近代における公共造園空間はそれらを空間的基盤として成立したという歴史的経緯も存在する。レジャー・レクリエーションの場としての性格は現在にも引き続いており,日本の国立公園に行く理由の約半数45.7%)が社寺仏閣となっている。また,良く知られていることではあるが,明治神宮の造営それ自体が造園学の成立の契機となったということもあり,両者の関わりは浅いものではない。今後,造園学の取り組みの中で,歴史を読み解き,地域らしさを追求しようとする試みは増加し,その試みの中に神社という空間が浮上してくることもよくあることのように思われる。
折しも,2020 年は明治神宮鎮座100 周年にあたる。これは単純な明治神宮の節目を意味するだけでなく,近代造園学の先駆的な取り組みであった,遷移を織り込んだ空間デザインの一つの到達点とされる目標年でもある。造園学会100 周年が射程に入る中で神社を通して,造園学を改めて瞰める機会とも成り得る。そこで,本特集では,神社と造園学の歴史的な関係を俯瞰したうえで,神社という空間にはどのような可能性があり,どのように扱い得るのかを議論したいと考える。
編集担当(水内佑輔・上田裕文)


目次

解題
社会・環境インフラストラクチャーとしての神社
水内 佑輔・上田 裕文

神社と公共空間の歴史
都市史のなかの神社
伊藤  毅
公園法制の胎動と社寺境内地
丸山  宏
近代における公共造園空間としての神社と造園学の系譜
水内 佑輔

神社と「森」
江戸時代における神社の森の資源利用の実態
今西亜友美
神社の空間イメージを再考する
小野 良平
歴史的神社建造物への木材供給のための森林管理
山本 博一
市街地における神社の樹木と神社を拠点とする緑地群に関する考察
髙橋 俊守
延喜式内社から見通す社叢
賀来 宏和
明治神宮の森の造営と管理からの示唆
濱野 周泰

現代における神社の多面性を読み解く
拡張される神社空間 -パワースポット・ブームが作る宗教環境
岡本 亮輔
神社空間におけるコミュニケーションとレクリエーションの共存
岡村  祐
福徳神社・福徳の森 -神社と広場を中心としたエリアの再編
湯澤 晶子・木庭 隆博・榊原 八朗・富田 文悟・池内  匠
都市開発における神社ランドスケープの考察 -六本木天祖神社の事例-
山野 秀規
災害履歴を伝承する社会装置としての神社空間
髙田 知紀
世界遺産 宗像が抱える問題 -自然の摂理と命の循環
葦津 敬之