ホーム » 学会賞 »

-2020年度日本造園学会賞(設計作品部門)

石井秀幸氏,野田亜木子氏

町田薬師池公園 四季彩の杜 西園ウェルカムゲート

 

本設計作品は,複数の公園等で成る対象地の核となる複合施設を整備し,認知度とエリア内の回遊性の向上が目的とされたものである。特に評価されたのは,農村集落を訪れたような園地に溶け込む建物の配置とランドスケープデザインとなっている点であり,斜面地の地形に沿った分棟型の建物とランドスケープ空間で集落のような一体感と回遊性がつくり出されている。また、園路については、既存の農道やけもの道など自然と人の営みから生まれた道筋と重ねられ,勾配を4%以下に抑えることで,つづら折れの手摺りのないスロープとし,そこからの風景をシームレスに展開させることで,単なる斜面地を空間体験の場へ変換することに成功させている。さらに,地域植生の調査を通じて,苗木の植樹,育成が行われるなど,空間の時間変容が想定された計画となっており,世代間で共有される現代の入会地(コモンズ)が形成されつつある。「土地の個性を大切にする」「無目的が目的となる場」「終わりのない場づくり」といった設計思想が現地から感じ取れる作品であり,時間と空間を重ね計画・設計する,というランドスケープアーキテクチュアの本質的な職能像を示すものである。以上より,日本造園学会賞(設計作品部門)を授与するに相応しいと判断された。