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グローバル通信No. 04 韓国・済州島におけるエコツーリズムとしての『オルレ』

A Development of Jeju Olle as an eco-tourism in Korea

権 孝ジョン(兵庫県立大学 緑環境景観マネジメント研究科)

韓国では、近年の健康ブームとともに「歩くこと(walking)」への関心が高まっています。そのなかで体表的な事例として、韓国の南にある済州島の「オルレ」を取り上げられます。「オルレ」とはもともと済州島の方言で「通りから家の門に通じる狭い路地」と意味ですが、いまでは済州島を歩きながら観光できるトレッキングルート(tracking route)として、韓国でもっとも成功したエコツーリズム(eco-tourism)としても有名になっています。

「オルレ」の訪問客数は、2007年に最初のコースが開場当時に3000名から始め、2008年には30,000名、2009年には250,000名に急増しています。現在、19コース(312 km)が開場しており、これによる経済効果は2007年に2憶ウォン、2008年に80憶ウォン、2009年には190憶ウォンと言われています。山羊が通っていた道を人が通れるように整備するなど、大幅の工事などをともなわず、ただそこにあった道を発見して、歩きやすく、分かりやすいように磨いただけの「オルレ」は、在来の商店街の売り上げが17%の増加、ローカルバスの利用客400%の増加、運営が難しかった宿泊施設の活性化など、地域経済においても驚くほどの力を発揮しています。

できるだけ自然のままの道を利用するという原則を立てて「オルレ」を開発・広報しているところは、非営利団体である社団法人「済州オルレ」で、既存の海岸公園や町にある道路以外の道は道幅が1mを超えないようにつくり、その道を車やバイクが通らないように環境調和的な面で配慮したそうです。「オルレ」は公有地が50%、私有地が50%で、地元住民の協力なくではできなかった事業だといわれます。

「オルレ」によって、「点旅行」であったパラダイムが「線旅行」に変わったとも言われます。これは、レンタカーなどを利用して移動し、名所だけをみる旅行から、その地域を歩いて移動ことで、地域をアナログ的に感じることができる旅行に変わったことを意味します。線旅行のほうが、地域の活性化に直接的につながることから、韓国の全土でも、さまざまな徒歩旅行コースを開発する動きにもなっています。

参考URL

http://www.jejuolle.org/ (社団法人「済州オルレ」)