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グローバル通信No. 01 まちをはかる指標としてのランドスケープ

国際委員会委員長
池邊このみ(ニッセイ基礎研究所)

キーワード:まち,景観,環境,指標,市民生活

このたび、ランドスケープに関する国際的な情報を会員の皆様にタイムリーに伝える企画として、「グローバルランドスケープ通信」を掲載することになった。海外での大学や業界の情報などを中心とし、海外にいる学会員にも、現在の海外での教育や業界の話題提供をしてもらうのが、その目的である。第1 回としては、まちをはかる指標としてのランドスケープとして、その事例を紹介したい。

『The International Awards for Liveable Communities (略称The LivCom Awards)』という都市の国際的表彰制度がある。国連環境計画(UNEP)が、国際公園レクリエーション管理行政連合(IFPRA)の承認を受け、英国の登録チャリティ団体が運営している。1997年に始まって今年で13 年目になる。2008 年には、280 を超える応募があり、現在では、都市の投資を図る際の指標のひとつにもなりつつあり、国をあげて受賞に力をいれる国も少なくない。積極的に参加している中国などで、この賞の応募目的は、海外からの投資家に、受賞結果を客観的な評価として示すことにあるようだ。日本では、2009 年までに、岐阜県各務原市、神奈川県横須賀市など14 の日本の自治体が受賞している。2004 年からはプロジェクト賞が創設され、2008 年に都市再生機構の「多摩平の森」が銅賞、2009 年には「越谷レイクタウン」が金賞を受賞している。

審査においては、昔からの自然や生態学的に重要な場所の保護、生物多様性への配慮の他、景観的向上を行うことにより、市民としての誇りを生み出し、市民の楽しい活動を可能にし、コミュニティ生活の質を改善した環境を作ったことを示すことが条件となっている。この賞での、景観の向上とは、風景や街並みを対象とし、人工的要素と自然の要素を組合せ、自然風景と人工的風景との間に共鳴関係を築いたことを示すとある。文化においては、今の世代と、これからの世代の生活の質に貢献するために、自治体が、歴史的建造物、自然遺産、産業遺産のみならず、言語や文化的慣習を組合せ、人工的な遺産、自然の遺産、そして該当する場合はその多文化的性質に、どのように価値を付け、保護・管理していくかについての観点が重要視されている。さらに、コミュニティの持続可能性においては、地域社会の計画、開発及び管理に一般市民や、団体や組織がどのように持続的に関わっていくのか、また地域社会にどのように権利が移譲されるのかなどが審査される。

広義のランドスケープが豊かな市民生活を含めた「まちを評価する指標」となっている事例として評価できる。